生まれ変わっても、君でいて。
「握手じゃなくて、繋ぐんだよ」
「どんな違い?」
「知らないよ」
ずっと拗ねたような態度を取っている白石の手に、俺はそっと自分の手を重ね合わせる。
それから、彼女の細い指全部を包み込むように、指に力を込めた。
白石の指は、自分より体温が低くて、ひんやりとしている。
これも、夢花が叶えたいと言っていた願いごとのひとつなんだろうか。
どうして今その願いを、実行したと思ったのだろうか。
白石に、聞いてみたいことは、山ほどある。
でも今は、この時間を大事にしたいから……聞こうとは思えなかった。
「ふぅん……、こんな感じなんだ」
「ふ、自分から言ってきたくせに、冷めた感想だな」
「ちゃんと熱い、赤沢君の手」
握りしめた手を見つめながら、白石は安心したようにぽつりとつぶやく。もしかして、俺が生きていることをちゃんと実感するために、こんなお願いをしたのだろうか。
白石の健気な気持ちに煽られ、俺の中でもひとつお願いしたいことが沸いてきてしまった。
「ねぇ、八雲って呼んでよ」
「え? 何で?」
「俺が粋って呼びたいから」
「……何で?」
答えになってないとでも言うように、同じ問いかけをしてくる白石。
自分でも、なぜこんな欲望が出てしまったのか分からないまま、つい口にしてしまった。
答えがないのでじっと白石を見つめたまま黙っていると、彼女は訝し気な表情のまま口を開く。
「……八雲」
「……うん、何か違和感すごいな」
「いや、そっちが呼んでって言ったんじゃん」
ごもっともな意見に、ははっと思わず笑いがこぼれる。
いくつもの名前を与えられてきた俺だけど、赤沢八雲としての人生を実感するために、彼女に名前を呼んでほしいと、思ってしまったのかもしれない。
彼女の体温を指先から感じながら、俺はもう少しこの人生をちゃんと実感したいと思った。
それと同時に、今目の前にいる彼女が、余命宣告をされていることを思いだして、胸が苦しくなる。初めて会話したあの日から知っていたことなのに、どうして今さら。
「粋」
彼女の名前を呼んで、痛みを感じて、今ハッキリと分かった。
彼女に、生きていてほしいと願う。……心から。
白石粋という存在は、俺の中で、確実に〝未練〟になっている。
〇
夢花がこの世界からいなくなった瞬間を、私は知らない。
「どんな違い?」
「知らないよ」
ずっと拗ねたような態度を取っている白石の手に、俺はそっと自分の手を重ね合わせる。
それから、彼女の細い指全部を包み込むように、指に力を込めた。
白石の指は、自分より体温が低くて、ひんやりとしている。
これも、夢花が叶えたいと言っていた願いごとのひとつなんだろうか。
どうして今その願いを、実行したと思ったのだろうか。
白石に、聞いてみたいことは、山ほどある。
でも今は、この時間を大事にしたいから……聞こうとは思えなかった。
「ふぅん……、こんな感じなんだ」
「ふ、自分から言ってきたくせに、冷めた感想だな」
「ちゃんと熱い、赤沢君の手」
握りしめた手を見つめながら、白石は安心したようにぽつりとつぶやく。もしかして、俺が生きていることをちゃんと実感するために、こんなお願いをしたのだろうか。
白石の健気な気持ちに煽られ、俺の中でもひとつお願いしたいことが沸いてきてしまった。
「ねぇ、八雲って呼んでよ」
「え? 何で?」
「俺が粋って呼びたいから」
「……何で?」
答えになってないとでも言うように、同じ問いかけをしてくる白石。
自分でも、なぜこんな欲望が出てしまったのか分からないまま、つい口にしてしまった。
答えがないのでじっと白石を見つめたまま黙っていると、彼女は訝し気な表情のまま口を開く。
「……八雲」
「……うん、何か違和感すごいな」
「いや、そっちが呼んでって言ったんじゃん」
ごもっともな意見に、ははっと思わず笑いがこぼれる。
いくつもの名前を与えられてきた俺だけど、赤沢八雲としての人生を実感するために、彼女に名前を呼んでほしいと、思ってしまったのかもしれない。
彼女の体温を指先から感じながら、俺はもう少しこの人生をちゃんと実感したいと思った。
それと同時に、今目の前にいる彼女が、余命宣告をされていることを思いだして、胸が苦しくなる。初めて会話したあの日から知っていたことなのに、どうして今さら。
「粋」
彼女の名前を呼んで、痛みを感じて、今ハッキリと分かった。
彼女に、生きていてほしいと願う。……心から。
白石粋という存在は、俺の中で、確実に〝未練〟になっている。
〇
夢花がこの世界からいなくなった瞬間を、私は知らない。