生まれ変わっても、君でいて。
 赤沢君を睨んだままぐるぐると考えを巡らせていると、「ガチで悩んでるね」と他人事のように煽られた。
「じゃあ、分かった。時事問題一通り出してみてよ。覚えてるから」
「え、そんなこと急に言われたって……!」
「調べればテキトーなの出てくるでしょ」
 そう言われて、私は赤沢君のスマホを託された。
 就活向けのような時事問題だと勉強している可能性があるから、私はあえて昭和時代のニッチなクイズから出すことにした。
「昭和時代流行ったモグラのキャラクターの……」
「もぐりん」
「さくらんぼ堂のアイスクリームの初期のCMソング……!」
「ふ~たり並んで~さくらんぼ堂」
「じゃ、じゃあ、今この駅ができる前にあった建物……」
「ここ? 前の前の人生で偶然この辺で生まれた時は、喫茶店だった」
 自分の祖父からしか聞いたことのない情報を、赤沢君はサラッと答えた。
 正直ただのクイズオタクな可能性もあると思って怪しんでいたけれど、最後の情報はさすがに信憑性が高い。だって赤沢君は高校二年生になってこっちに引っ越してきた人で、地元は東京だと自己紹介の時に言っていたから。
「またここに住むことになるなんてなー。なんの所縁があるのか、中国地方に引き寄せられやすいんだよな」
「そ、そうなんだ……」
「ひとつ前の人生は著名な登山家。その前は巷で話題の絶世の美少女。そういえば、教師だったこともある。もう、十回は生まれ変わってるかな」
これは、信じるべきなんだろうか。もう分からなくなってきた。
 吹っ掛けたのは自分なのに、完全に赤沢君のペースに持っていかれてしまっている。
「超記憶能力者って言うんだって。俺みたいな人間のこと」
「超……記憶能力……」
「ねぇ、白石こそ、何で俺なんかに急に余命宣告されてること打ち明けたの?」
 突然質問される側になり、私は言葉に詰まる。
 何でって言われても、大した理由はない。
 さっきの発言にカチンときたから、ただ赤沢君を、困らせてみたかっただけだ。
「別に……、なんとなく」
「ふぅん? まあ、そんな落ち込まずに来世に賭けなよ」
 再び言い放たれた軽い言葉に、私は思わずムッとしてしまう。
「あのさあ、私は前世の記憶を保てないんだから、私目線では人生は一度きりなんだけど、一応」
 少し強めに伝えると、赤沢君は「たしかに」と言ってキョトンとしてから無邪気に笑った。
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