ひと夏のキセキ
Prologue

Side-Aya-

鳥が飛んでいる。


大きくて…美しくて……そして、自由。




私は…。


いつも病院に閉じ込められて、自由を知らない。




学校だ、勉強だ、恋だ、バイトだ。


そんなふうに生きたかったな…。


でも私には無理なんだ。




『余命は…半年もないと思われますね』


まだ桜のツボミがで始めたばかりの頃。


担当医の先生の言葉が忘れられない。


でも…怖くはなかった。


長い長い闘病生活に、ついにピリオドを打つ時が来たんだ。



でも……。


それでもやっぱり…。


「…恋愛……してみたかったな……」


私の掠れた呟きは、誰にも届くことなく窓の外へと消えていった。


カラッとした暑さが、夏の始まりを告げていた。

< 1 / 353 >

この作品をシェア

pagetop