ひと夏のキセキ
「お前らさー、絢にガッツキすぎ。戸惑ってんじゃん。ごめんな、こんな奴らで」


「ううん、私は皆と仲良くなれて嬉しい」


「なにそれ、めっちゃ可愛いんだけど」


ずっと友だちなんていなかった。


友だちはおろか、知り合いすらいなくて。


メッセージアプリに入ってる連絡先は、お母さんとお父さんだけ。


それが私の普通だった。


「連絡先交換しよーぜ」


「あ!あたしだってまだなのにぃ。あたしとも交換して」


一気に4人分増えた連絡先。


宮内葵、太田海、松井陸、佐々木真生。


その羅列に思わず頬が緩む。


「あ、笑った。笑顔ちょー可愛いじゃん」


「俺、毎日見舞い来るわ」


「いーよ来なくて。あんたらが来るとうるさい」


「葵じゃなくて絢の見舞いに決まってんだろ」


「ったく。どんだけ気に入ったんだよ絢のこと」


絶え間なく誰かが喋っていて騒がしいけど、とても居心地がいい。


そんな気持ちになったのは初めてだ。


命が尽きるまであと2ヶ月。


少しでも楽しい2ヶ月になればいいなぁ……。
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