ひと夏のキセキ
「これ以上コイツ怒らせたらヤベェから帰ってくんない?俺でよかったらいつでも相手するか
らさ〜」


海がノアさんの背中を押して外へ連れ出そうとする。


「触んないでよ!私諦めないから!絶対遥輝くんのこと振り向かすんだから!」


「はいはい。一旦外出て。遥輝の機嫌損ねられちゃこっちが迷惑なんだって」


葵と陸も女の子たちの腕を引いて廊下に連れ出す。


そして嵐のような時間は過ぎ去った。


疲弊した表情の葵たちが戻ってくると、ようやく静寂が訪れる。


「やっと落ち着いたか。ありがとな、対応してくれて」


真生が3人を労う。


遥輝は今だに不機嫌そうにスマホをイジっている。


「ったく。どこぞのお坊ちゃんはいい身分だなぁ。騒がせるだけ騒がせて対応は丸投げだなんて」


葵の嫌味に腹を立てたのか、遥輝は一言も喋らないまま部屋を出ていってしまった。


「あ…遥輝…」


見たことないくらい機嫌が悪かった。


後を追いたいけど、私が行ったら余計に迷惑だろうなと思うと動けない。


「放っときな。機嫌悪いときのアイツはダルいから」
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