ひと夏のキセキ

✡✡

「絢!」


その日の放課後、校門を出たところで背後から呼び止められた。


振り返らなくても声の主は分かる。


「もう病院戻んの?」


遥輝が私の隣にくっついて歩き始めると、近くにいた女の子たちから悲鳴が漏れた。


今朝はあんなに嫌がっていたのに、目立つところでまた私に話しかけていいのかな。


そう思ったりもするけど、話しかけてくれることがすごく嬉しい。


「戻るよ。早く帰らないと怒られちゃう」


病院と学校はお母さんの車で往復している。


学校の近くに車を停めてくれているから、遥輝と一緒に帰れる時間はわずかだ。


本当は帰りたくない。


もっと遥輝と一緒にいたい。


でも、身体のことがあるから。


あまり外出が続くと身体に障るから。
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