ひと夏のキセキ
「わっ!もう始まるよ!どうしよう!」


勝手が分からずあたふたしている途中でシャッター音が鳴る。


「落ち着けって」


半笑いの遥輝に肩を抱かれ、余計に頭が真っ白になる。


「バカ、俺じゃなくてカメラ見ろよ」


ケラケラ笑われて顔が赤くなるのが分かった。


でも、遥輝も楽しそうにしてるし、いっか。


ポーズとかはよくわからないけど、自然体が1番いいよね。


そう思って撮影してると、すごく楽しくなってきて、隣にいてくれるのが遥輝で良かったって心から思える。


画面に映る私も遥輝も自然な笑顔で、楽しい時間だった印が刻まれている。


そしてあっという間にラストの1枚になってしまった。


「最後ポーズどうす―」


遥輝を見上げた瞬間、温かく柔らかいものが唇に重なった。


え…?


キスされてる…?


突然の事に理解が追いつかないまま、最後のシャッターが切られた。
< 120 / 353 >

この作品をシェア

pagetop