ひと夏のキセキ
“隣の落書きブースに移動してね”という音声が流れると、遥輝は何事もなかったかのように撮影ブースを出ていく。


今の…何…?


気のせい…じゃないよね…?


「あの、遥輝」


「ん?」


混乱してるのは私だけで、遥輝はケロッとしている。


私はどれだけ考えても遥輝の気持ちが分からないのに、遥輝は手玉に取るように私の気持ちをもて遊ぶ。


遥輝は私のことをどう思ってるの?


なんでキスしたの?


私とは遊び?それとも本気?


キスされて舞い上がってるのは私だけ?


ドキドキしてるのも私だけ?


遥輝は?


遥輝は今何を考えてるの?
 

聞きたいことはたくさんあるのに、上手く言葉にできない。


「遥輝はズルいよ…」


出てきたのはそんな言葉だけ。
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