ひと夏のキセキ
「ごめん。嫌だった?」


分かってるくせに。


私が遥輝に恋してること、ホントは全部分かってるくせに。


「…嫌だったって言ったらどうする?」


ちょっとくらい意地悪言っても許してくれるよね?


いつも私だけ振り回されるんだもん。


「嫌そうな顔じゃないけどな。これ、見てみろよ」


画面に映し出されるキスプリ。 


遥輝の後頭部越しに映る私の顔は、驚きと嬉しさが入り混じっている見たことのない表情だ。


「…分かってるんじゃん。私がキスされて嬉しかったことも、遥輝のことを好きなことも、分かってるんでしょ」


結局遥輝には勝てない。


ちょっとくらい困らせたいのに、いつも上手くかわされる。


こんなことまで言わされちゃって…。
< 122 / 353 >

この作品をシェア

pagetop