ひと夏のキセキ
「それは違―」 


「違わないよ。私が新鮮なリアクションするから楽しかったの?他の女の子と違って男性慣れしてないからおもしろかった?」 


今までの疑問が涙と一緒に溢れてくる。


「せっかく今日楽しかったのに…っ。初めてお出掛けできて本当に嬉しかったのに…っ」


「泣くなって。絢が思ってる意味じゃないから。話聞いて」


「聞くなって言ったじゃん…っ」


人前で泣いてしまうなんて、何してるんだろう。


周りの人の視線が突き刺さって痛いし恥ずかしい。


「言ったけど、泣かれたら話は変わってくる」


「そうだよね、連れの女の子泣かせる男に見えちゃうもんね、嫌だよね」


もう遥輝なんて知らない。


勝手にすればいいんだ。


「だからそういう意味じゃねぇって。なんかいろいろごめん。だけど、話はちゃんと聞いて」


嫌味を言っても、泣いても、遥輝はちっとも嫌な顔をしない。


それどころか心配そうに、申し訳なさそうに、オロオロしている。
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