ひと夏のキセキ
そういえば遥輝は不器用な人だったな…。


“絢が思ってる意味じゃない”ってどういうことだったんだろう。


「しょうがないから話は聞いてあげるね」


ホントは聞きたくてしかたないんだけど、泣いたり怒ったりした手前、素直に言えなくて。


可愛くない発言だなぁと自分でも思うけど、遥輝はホッとしたような表情を浮かべる。


「俺は、絢を弄ぼうなんて少しも思ってないことだけは分かって」


出逢ってすぐの頃と同じ、真剣な目。


遥輝は嘘はつかない。   


思ってないことは言わない人。


だからこそ不安だった。


好きだって一言も言ってくれないから。


「私はもてあそばれた気分だったよ。もしかしたら両想いかもって浮かれてて、キスまでされて…。それなのに好きって言ってくれない。そのうえ、何も聞くなって。ひどいよ…」
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