ひと夏のキセキ
「……出逢ってからまだそんなに時間は経ってないけど、俺の中で絢って存在がどんどん大きくなっていって」


遥輝はボソボソと話し始めてくれた。


「俺だけのものにしたいとか、ずっと側にいたいとか、そんなふうに思うようになって。

あぁ俺はこいつのことが好きなんだなって自覚もあった。

だけど、俺…怖えーんだ。

俺が大切に思う人はいつも俺の側からいなくなる。母さんが死んだとき、茜が死んだときに感じたあの喪失感をまた感じるかもしれない。

だったら俺は誰のことも大切に思いたくない。もう失いたくないから、誰のことも手に入れたくない。

絢とこれ以上仲良くなるのが怖い。今度は絢が俺の側から消えていくかもしれないと思うと、一歩が踏み出せない。

だから、この気持ちに整理がつくまで時間が欲しかった。今日を最後に、しばらく絢と距離を置こうと思ってた。

そのくせ先にキスしたのは悪かったと思ってる。嫌な思いさせてごめん。泣かせてごめん」


遥輝が私に心の内を語ってくれたのは2回目だ。


どちらもすごく重たくて、たった一人では背負いきれないくらいしんどい。
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