ひと夏のキセキ
「…なん…ですか…?」


不思議と怖いとは思わなかった。


むしろ、彼の持つ独特の空気感に惹かれていた。


どきん…っと胸が弾む。


鼓動が広がる。


「…茜……じゃないよな」


あかね…?


誰…?


「…ごめんなさい、知らないです」


そう答えると、彼は残念そうに、でも納得したような、どっちつかずな表情をした。


それ以降彼は一言も口を開かず、ただ葵のベッドの横に立ちスマホをいじっている。


気まずい…。


茜って誰だろう…。


気になるけど、人見知りが激しくて自分からは話しかけられない。


でも…気になる…。


「あの」


気がつけば言葉に出ていた。


彼の鋭い視線が私に向けられる。
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