ひと夏のキセキ
これが現実か…。


絶望の淵に突き飛ばされたみたいだ。


でも、そうだよね。


漫画みたいにそう上手く行くわけないよね。


期待しちゃってバカみたい。


所詮私は囚われた病人だ。


「夏祭り…行きたかったな……」


廊下の空気はヒンヤリ冷たい。


まるでたった今突きつけられた現実のよう。


「絢!」


低くて安心感のある声が廊下に響いた。


「遥輝!今日早いね。学校は?」


「昨日で終わり」


ひと目遥輝を見ただけで沈んだ気持ちが嘘のように晴れていく。


「そうだったんだ。最後にもう一度行きたかったな」


「いや、俺が行ってないだけで、金曜までは学校あるから。行きたいなら行けばいーんじゃね?葵たちが喜ぶだろーし」


「そうなの?もー、ちゃんと学校行きなよ」


なんてことのない会話をしながら病室に戻る。
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