ひと夏のキセキ
―コンコン

「お取り込み中失礼しまーす」


ノックと同時に聞こえてきた声は堂島さんだ。


「絢ちゃん、これ神田先生のところに落としてたよ」


堂島さんが持ってきてくれたのは指輪。


遥輝とお揃いで買った指輪だ。


「あっ、ありがとうございます!」


よりによって遥輝がいるタイミングで神田先生のところに指輪の忘れ物って、最悪だ。


「仲良いのは良いことだけど、声のボリュームだけ気をつけてね〜」


堂島さんはそう言い残してあっという間に去ってしまった。


遥輝怒ってるかな…。


「痩せたの?」


予想とは反対に、遥輝は心配そうな表情を浮かべていた。


不機嫌な様子はないみたいだ。


「指は細くなったかも」


前に買ったときはピッタリだった。


あれから全然月日が経っていないのに、リングが抜け落ちるくらい痩せてしまった。
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