ひと夏のキセキ
でも心配させたくなくて、ダイエット成功しただなんて笑顔を作る。


本当は食欲がなくて痩せ細っただけなんだけど。


「お前の嘘はすぐ分かる。作り笑顔もな」


遥輝は柔らかく芯のある声で優しく頭を撫でてくれる。


「体調悪ぃの?」


「…悪くないよ」


「ホントは?」


「ホントに体調は悪くない。食欲がないだけだよ」


嘘じゃない。


遥輝に出会ってからずっと体調が良い。


遥輝のおかげで生きてる実感がある。


「そっか。あんま無理すんなよ?」


「うん。ありがとね」


指輪を落としただけでこんなに心配してくれるなんて、遥輝はすごいなぁ…。


どこまでも私のことを理解してくれている。


「昨日言ってた夏祭りだけど、行くのやめよう。絢が心配」


「え!やだよ!行こうよ」


許可は出なかったけど。


それでもなんとしてでもお祭りに行きたい。


この気持ちは絶対に譲れない。
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