ひと夏のキセキ
そんな吐き捨てるように言わないでよ…。


「私には今年しかないんだよ…。分かってよ……」


来年はおろか、冬まで生きていられるか分からないのに。


簡単に諦めるなんてできない。


「…どういう意味?」


低い声で尋ねられ、ハッと気づく。


私、なんて言った…?


今年しかないって…言っちゃった…?


やってしまった…。


これ以上問い詰められないように俯く。


「お前……俺にまだ隠してることがあるんだろ」


強い力で肩を掴まれて怯みそうになったけど、絶対目は合わせられない。


目を合わせたらすべて見透かされそうで怖い。


「……今の、どういう意味?」


「…痛いよ遥輝」


「ごめん」


肩から遥輝の手が離れていく。


でも視線はずっと私に向いている。


俯いていても感じるくらい強い視線。
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