ひと夏のキセキ
「よし、じゃあそろそろ行こっか。遥輝くん待ってるんじゃない?」


「うん!」


楽しみだなぁ。


遥輝とは学校の近くの駐車場で待ちあわせしている。


メイクしていくとは言ってないから、反応が楽しみだ。


気づいてくれるかな…?


車で10分の距離がすごく長く感じる。


早く遥輝に会いたい。


はやる気持ちが抑えられない。


「こんなに楽しそうな絢、初めて見た。遥輝くんに感謝しなきゃね」 


バックミラー越しに、優しい顔のお母さんと目が合った。


たしかに、今人生で1番幸せだ。


遥輝と出逢わなかったら、生きることの楽しみを感じないままに死んでいたかもしれない。


「さ、着いたよ。お母さんは近くで時間潰してくるから、車の中で自由に過ごして。くれぐれも無理しないでね。何かあったらすぐ連絡すること」


「わかった。約束するね」


屋台が立ち並ぶお祭り会場からは少し外れた位置にあるこの駐車場には、あまり人はいない。
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