ひと夏のキセキ
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翌朝、目が覚めると1番に、ベッドに突っ伏して眠っているお父さんが視界に飛び込んできた。
「一晩中いてくれたんだ…」
申し訳ないな…。
私が一人で暴走したせいで、色んな人に迷惑をかけ傷つけた。
なにやってるんだろう、私…。
「おはよう…絢…」
「おはよう。一晩中いてくれたんだね…。ありがとう」
「絢が心配で。でも、もう大丈夫そうか?大丈夫なら会社行ってくるけど」
疲れ切っている顔で言われ、胸がギュッと締め付けられる。
「大丈夫だよ。ごめんね、お父さん…」
「謝る必要なんてない。絢は何も悪いことしてないだろ?」
昨夜は気づかなかったけど、スーツ姿ってことは仕事終わりに駆けつけてくれたってことだよね。
それなのに家に帰らずそのまままた会社に戻るなんて。
「私のせいで大変な思いさせちゃった…」
「そんなこと気にしなくていいんだよ。なんなら、家より病院のほうが会社に近いからちょうどいいよ」
おどけて笑うお父さんの優しさがまた胸に染みる。
「ごめ…じゃなくて、ありがとう、お父さん」
「うん。じゃあ会社行ってくるから。お母さんとちゃんと話すんだよ」
優しい表情で言い残して病室を出ていこうとするお父さん。
ちょうどその時、慌ただしいノックと共にドアが勢いよくスライドされた。