ひと夏のキセキ
「うわっ!ビックリしたぁ…。なんだ遥輝くんか」


お父さんと正面衝突しそうになったのは、遥輝だった。


「遥輝…」


目の下にクマを作り、左頬が少し腫れている。


「昨日は本当にすみませんでした」


苦しそうな顔でお父さんに向かって深々頭を下げる遥輝を、見るのがツラい。


私のせいでこうなったのに。


「謝らないでよ…。遥輝は悪くないよ…?」


「俺がちゃんと絢の体調に気をつけてれば、こうはならなかった。絢の希望を受け入れるんじゃなくて、ちゃんと拒否すればよかった」


無表情だけど、そこには深い後悔と傷が見え隠れしている。


私のせいで遥輝を追い詰めちゃったんだ。


私がワガママ言ったから。


「遥輝くん。もう大丈夫だから。遥輝くんが気に病む必要はないよ」


穏やかに肩をぽんっと叩いて、お父さんは病室を出ていった。
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