ひと夏のキセキ
「俺もそうすべきだと思ってる」


「…なんで?私はそれを望んでないんだよ?」


お母さんに言われたからって、私の気持ちは無視?


「恋愛感情よりなにより、お前の命が大事だろ。お前を守るのが最優先事項なんだよ」


……あっそ。


「…ほんと、嫌になっちゃう」


もう呆れちゃった。


誰も私のことなんて分かってくれないんだ。


遥輝だけはわかってくれると思ってたのに。


病院に閉じ込められるだけの人生に何の価値があるっていうの。


だったら短くてもいいから遥輝と一緒に価値のある人生を送りたい。


この気持ち、どうして誰も分かってくれないかな。


「約束、嘘だったんだね。楽しみにしてたんだけどな。遥輝なら私の人生変えてくれるかもって思ってたんたけどな…。全部、私の勘違いだったんだね」


「いや、それは―」


「嘘つき。遥輝のバカ。もういいよ…っ。もう、いい…っ」


こんなことで泣きたくないのに。


唇を噛み締めても涙腺は緩んでいく一方。


味方がいなくなった孤独感。


信じていた人に裏切られた感覚。
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