ひと夏のキセキ
「遥輝だけは私の気持ち分かってくれると思ってた。遥輝だけは私に希望を持たせてくれると思ってた。なんだか、裏切られた気分だよ…。勝手に期待したのはこっちなのにね。バカだね、私」


「………」


「私、楽しみにしてたんだよ…?遥輝と一緒に遊園地や水族館に行くことも、プールや海に行ったり、バーベキューしたりするのも。こんな私でも、普通の生活を味わえるかもしれないって、すごく嬉しかった。でも…やっぱり高望みしちゃいけなかったんだね…」


バチが当たっちゃったんだ。


だから唯一の光を奪われちゃったんだ。


「…ごめん」


そっと抱き寄せられ、遥輝の温もりを全身に感じる。


「それでも俺は、絢に少しでも長く生きてほしい」 


「……やっぱり分かってくれないんだね…。遥輝がいない人生なんて価値がないんだよ。死んでるのと変わらない」


体を押し返し、遥輝から離れる。
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