ひと夏のキセキ
Side-Haruki-
「茜…!!待て…!!!」
「ごめんね、お兄ちゃん」
「待てって!!お前のことは俺が絶対守るから!!」
雑居ビルの屋上。
真上にある太陽がヤケに近く、クラッとする。
茜は、鉄板のように熱くなった鉄柵を乗り越えわずか5センチの幅に立っている。
手を伸ばし茜に近づく俺。
太陽はそんな俺たち兄妹を引き裂くように日を降り注ぐ。
「何があったか話せ。俺が絶対になんとかするから!だから死ぬな!!頼む茜!!」
「来ないで!!」
近くに駆け寄ろうとした俺に、茜が叫んだ。
大人しくて可愛らしかった茜からは聞いたこともない怒号だった。
「もう遅いの。もう遅いんだよ…」
「あか…―」
「ばいばい、お兄ちゃん」
スルリ―
視界から茜が消えた。
「茜!!!!!」
鉄柵に駆け寄ったときにはもう、茜は遥か下のアスファルトに倒れていた。
「茜ーーーー!!!!!」