ひと夏のキセキ
ペットボトルの冷たさが、受け止めた両手に広がっていく。


「今の言葉、まったく同じことを遥輝に言われたことがあるんだ。ホントびっくりだよ」


懐かしそうに目を細める葵。


葵の前では、遥輝はどんな人なんだろう。


冷たくて無愛想だって言っていたけど、本当は温かくて優しい人なんじゃないかな…。


彼の空気がそうだった。


「…“普通って何?誰が決めたわけ?別になんでもいいじゃん。お前はお前だろ”そんなふうに言われて救われた。マジで根はいい奴なんだよなー、あいつ」


冷たいけど、と小さく付け加えてから葵はオレンジジュースを一気飲みした。


「ねぇ葵…、遥輝ってどんな人?」


遥輝のことをもっと知りたい。


知って仲良くなりたい。


「遥輝のことが気になるんだ?」


「もう、ニヤニヤしないでよっ」


「可愛いなぁ。いいじゃんいいじゃん、なんでも教えてあげる」
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