ひと夏のキセキ
「でもお前は、違うんだろ。俺と一緒にいろんなとこ行って、いろんな想い出作って、それで余命が短くなっても構わないって思ってんだろ?」


…!!


ドンピシャ。


やっぱり遥輝はエスパーだ。


「わかってたんだね」


分かってて別れようとしたんだね。


私が生き続けることってそんなに大切?


会えないし話せなくても、生きてるだけで遥輝たちは満足なの?


どうして?


「私は、少しでも楽しい経験をしてから死にたい。私っていう存在に価値があるって言ってくれたけど、私はそうは思わない。人並みの幸せを経験を知らない私の人生には価値がないって感じてる」


「んなこと―」


「価値観は人それぞれだよ。遥輝はさ、この先長いんだから私が死んでからきっと良い人が見つかるよ。それでその人と末永く幸せになればいいじゃん。でも私には“今”しかない。遥輝しかいないの。私の自由をこれ以上奪わないでほしい」


私が遥輝にこだわる理由はあっても、遥輝が私にこだわる理由はない。


だってこの先いくらでも楽しいことが待ってるんだから。


だから、今回ばかりは私の価値観を優先してくれてもいいじゃん…?


それってそんなにダメなことなのかな。
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