ひと夏のキセキ
―コンコン
半日以上ボーッとして過ごした夕暮れ時、扉を叩く音がした。
「遥輝…?」
スーッと開いた扉から入ってきたのは、葵と真生だった。
真生の顔は傷だらけ腫れ上がっていて、葵の手足にもいくつも青痣がある。
「ど、どうしたのそれ」
ただ事じゃない。
何があったの…?
「ごめんな遥輝じゃなくて」
「ううん、そんなのどうだっていいよ。何があったの?」
こんなに意気消沈してる葵や真生を初めて見た。
何かあったのは明白で、心がザワザワする。
「遥輝が手をつけらんなくなった」
遥輝が…。
葵と真生の表情は暗い。
「その傷、遥輝にやられたの…?」
「んーー…、まぁこれは事故みたいなもん」
葵はそう誤魔化したけど、遥輝が真生や葵に手を上げたってことだよね…?
遥輝がそんなことするなんて…。