ひと夏のキセキ

―コンコン


半日以上ボーッとして過ごした夕暮れ時、扉を叩く音がした。


「遥輝…?」


スーッと開いた扉から入ってきたのは、葵と真生だった。


真生の顔は傷だらけ腫れ上がっていて、葵の手足にもいくつも青痣がある。


「ど、どうしたのそれ」


ただ事じゃない。


何があったの…?


「ごめんな遥輝じゃなくて」


「ううん、そんなのどうだっていいよ。何があったの?」


こんなに意気消沈してる葵や真生を初めて見た。


何かあったのは明白で、心がザワザワする。


「遥輝が手をつけらんなくなった」


遥輝が…。


葵と真生の表情は暗い。


「その傷、遥輝にやられたの…?」


「んーー…、まぁこれは事故みたいなもん」


葵はそう誤魔化したけど、遥輝が真生や葵に手を上げたってことだよね…?


遥輝がそんなことするなんて…。
< 248 / 353 >

この作品をシェア

pagetop