ひと夏のキセキ
どうして葵はそんなに遥輝を…?


ついこの前まであんなに遥輝を心配していたのに。


足を組んでムスッとしている葵に目を向ける。


全然目を合わせてくれない…。


唇を強く噛み、何もない地面を睨みつけている。


「葵…。どうして遥輝のこと…」


そこまで言って気がついた。


泣いてる…?


ムスッとしているんじゃなくて、涙を堪えているんだ。


瞳は潤んでいて、唇は震えている。


「葵……」


どうして…。


遥輝との間に何があったの…?


「…絢はまだアイツのこと好きなの?」


「え…?」


「もうあんなヤツやめとけよ」


一筋の涙が傷のついた頬を伝った。


「マジで許せねぇわ…」


上を向きパチパチ瞬きをして手荒く頬を拭う葵。


葵の涙を見るのも初めてだ…。
< 251 / 353 >

この作品をシェア

pagetop