ひと夏のキセキ
「何があったのか聞いてもいい…?」


葵をここまで怒らせる原因は何?


遥輝は何をしたの?


知りたい。


だけど、二人とも示し合わせたように黙り込んで何も言ってくれない。


「私に言えないようなことがあったんだね…」


私が知るべきじゃないこと。


葵が怒りの涙を流すほどのこと。


遥輝…。


今何を考えてる…?


苦しい…?つらい…?


知りたいよ…。


教えてよ…。


「…詳しいことは言えない。でも、アイツのことはもう忘れた方がいいと思う」


「そんなこと言われたって―」


「それが絢のためだ」


何も知らされずに忘れるなんてできない。


忘れたいと願ったことなんて星の数ほどある。


それでも忘れられないくらい好きだから苦しいの。


なのに理由も分からないまま忘れろだなんて言われても無理だよ。
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