ひと夏のキセキ
「そう思う理由を教えて」


覚悟はできている。


何を聞かされても大丈夫。


真っ直ぐに葵と真生を見つめる。


葵は目を泳がせたけど、真生は頷いてくれた。


「はっ?話すつもり?」


葵が立ち上がって真生に掴みかかろうとする。


真生はサラッと避けて葵を睨む。


「お前は少し落ち着けよ。イライラしすぎ」


「……頭冷やしてくる」


早足に出ていってしまった葵。


今は後を追わないほうがいいよね。


あんなに取り乱した葵、初めて見たな…。


何がそうさせたんだろう。


遥輝は何をしたの?


「教えてほしい」


「後悔しない?」


「うん」


私が後悔するとしたら1つ。


遥輝と恋に落ちてしまったこと。


それ以上に悔やむことはこの先ないだろう。
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