ひと夏のキセキ
真生は小さく息を吐き、葵が座わっていた椅子に腰かける。


「夏休み前学校に来たとき、俺らの溜まり場で会ったノアって子覚えてる?」


ノアさん。


たしか、遥輝のことがずっと好きで私を敵視してきた先輩だよね。


「覚えてるよ」


「遥輝が最近、その子で遊んでるらしい」


遊んでるって、それはつまり…。


そういうことだよね…。


気を遣って明言は避けてくれたのかもしれないけど。


「ノアだけじゃなくて、他の女の子たちとも取っ替え引っ替え」


…そっ…か…。


全身の力が抜けていく。


付き合ってるのかも分からない今、浮気って言葉を使っていいのか分からない。


でも、ショックだ…。


「それを知った葵がブチ切れて、遥輝のことぶん殴って、遥輝も応戦して…今に至る」
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