ひと夏のキセキ
「妻も娘も、星が大好きだった。遥輝は興味なさそうだったけど、でも楽しそうにしてた。妻が亡くなるまでは、の話だけど」


「…遥輝…プラネタリウム好きだったんだ」


知らなかった。


遥輝は何にも教えてくれないから。


私だけいつも何も知らない。


遥輝が何を考えているのか、何もわからない。


「…今日、遥輝と話そうと思ってる。思い出が詰まってるプラネタリウムで」


「……そうですか」


遥輝が遥輝らしさを取り戻すためには、過去のしがらみを取り除く必要がある。


それは私にはできないこと。


父である神田先生にしかできない。


「絢ちゃんも来ない?」


私…?


なんで私が。


神田家の事情に私なんかが首を突っ込むわけにはいかない。


それに、遥輝とはもう会わないって決めた。


遥輝もきっとそれを望んでる。
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