ひと夏のキセキ
「…もう会わないのがお互いのためだよ。悲しいけどさ」


「そんなことないよ」


「…なんでそんなに私たちを繋ぎ止めたいんですか?」


先生には関係ないじゃん。


私と遥輝の問題なのに、どうして先生が絡んでくるの。


「遥輝が心配なんだよ。あの子はこの時期になると毎年不安定になる。だけど、元凶の僕にはどうすることもできない。でも…絢ちゃんなら遥輝を支えられるんじゃないかと思って」


「……」


葵にも似たようなことを言われたな…。


私が遥輝支えるなんて、無理なのに。


何をしていても付き纏ってくる“死”。


もうすぐ死ぬという変えられない事実。


遥輝のトラウマをエグることしかできない。


「会うのは今日が最後でもいいから。だから、お願い。遥輝と会ってほしい」


「…お医者さんのくせに体調不良者を連れ回そうとするなんて」


起き上がることすらままならない私を、外出させる医者がどこにいるの。


全部全部神田先生のエゴじゃん。
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