ひと夏のキセキ
「絢ちゃんのご両親には了承を貰ってる」


「……神田先生。先生は医者です。遥輝の父親でもあるけど、私にとっては担当医です。めちゃくちゃなこと言わないでください」


何かあってからじゃ遅いって、いつも先生も親も言ってる。


なのに今回だけは例外なんて、虫が良すぎるでしょ。


今まで元気なときに散々外出したかったのに許可されなくて。


それなのに、息子のピンチが来たら衰弱していても外出させようとするなんて。


おかしいじゃん。


今までたくさん我慢してきたのに。


「…ごめん。そうだよね」


ガックリと肩を落とす神田先生。


その姿を見せられると、胸がキュッと痛む。


いつもお医者さんらしく威厳のある先生からは想像もできない縮こまった姿。
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