ひと夏のキセキ
フルーツバスケットを抱え、中の果物を一つ一つ見ていく。


りんご、オレンジ、ぶどう、バナナ。


どれも美味しそうだ。


―ぽんぽんっ


「え…?」


優しい手つきで頭を撫でられ、思考がフリーズする。
 

きゅ、急になに…?


ド、ド、ド、と心臓が暴れだして顔が急に熱くなってくる。


「可愛いな…と思って」 


照れもせず表情も変えずクールな顔で言われ、余計に頭が混乱する。


私…可愛いって言われた…?


遥輝に…?


「表情がコロコロ変わるから見てておもしろい」


「…褒め言葉って受け取っていいの?」


「あぁ。素直が1番いーよ」


遥輝はそう言ってもう一度頭を撫でてくれた。


トゥクン…。


胸のときめきが抑えられない。


この温かい手が好きだ。


誰に撫でられるよりも安心する。
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