ひと夏のキセキ
「ごめんなさい。ずっと病院にいれば少しでも長く生きられると思ったから…」


「……わかってるよ」


私のためを思っての行動だってことは理解してる。


「だから、もういいよ。この話はやめよう」


今さらこんな話をしたって、遥輝との関係はもう戻らない。


もうどうでもいい。


「ごめんね、絢…」


「…謝らないでよ」


お母さんは今どんな顔で車椅子を押しているんだろう。


泣きそうな顔…してるのかな。


ほんと…親不孝な娘だよね。


「…私の方こそごめんね、お母さん」


「なんで絢が謝るのよ…」


「親不孝だから。お母さんのこと傷つけちゃったし、親より先に死ぬなんて、ひどい娘じゃん」


ピタリ…と車椅子が止まった。
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