ひと夏のキセキ
「それに、少し前、遥輝が自分から僕に会いに来たんだ。今での遥輝からは考えられない行動だった。“絢のことを知りたい。守りたい。だから、絢の病気について全部教えてくれ”そう言って遥輝は僕に頭を下げた」


……っ。


遥輝…。


あんなに憎んでたお父さんに、頭をまで下げたんだ…。


私なんかのために…。


「遥輝の行動を変えたのは間違いなく絢ちゃんだよ。絢ちゃんは、遥輝を救ってくれた。たしかに遥輝は今も過去のことで苦しんでるよ。でもそれは、絢ちゃんのせいじゃない。遥輝にとって絢ちゃんは、かけがえのない宝物なんだよ」


宝物…?


私が…?


遥輝より先に死んで、また傷をエグる私が…?


そんなわけない。


私は遥輝に相応しくない。


遥輝もそう思ってるから、私とは会ってくれないし女遊びを繰り返すんでしょ?


私じゃ満足にデートもできない。


他の女性と遊んだほうが楽しいに決まってる。
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