ひと夏のキセキ
こんな話、つまらないよね…。


申し訳なくなって遥輝を見上げる。


遥輝はそんな私を真剣な目で見つめてきた。


「絢はどうしてぇの?何かやりたいこととかあるんなら言ってみろ」


真っ直ぐで力強い瞳。


それは、私に希望の光を差してくれるものだった。


「遥輝が叶えてくれるの?」


「あぁ。俺にできることなら何でも」


遥輝……。


今までそんなふうに言ってくれる人なんていなかった。


遥輝が初めてだ。


「私…もっと楽しい人生を送りたかった。入院生活で自由はなくて、学校にも行けなくて。青春を楽しみたかった」


溢れ出す本音。


遥輝の前では不思議と素直になれる。


自分の感情をそのまま出してもいいんだと思わせてくれる。


「どうして私は楽しいことが何もできないのかな…」


遥輝はまた、優しく頭を撫でてくれた。


その優しさに心が温まり、なぜだか涙腺が刺激される。


「泣くなよ…」


ずっと我慢していた本当の気持ちが止められない。


自由になりたい。


友だちと遊びたい。


恋愛したい。


普通の高校生活を送りたい。


どうして私は何もかも我慢しなきゃいけないんだろう。


私…何も悪いことしてないよ…。


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