ひと夏のキセキ
「どうして私は自由になれないの…?」


ポツリ…ポツリ…とシーツが濡れてゆく。


「ったく。ほら、涙拭けよ」


無造作にティッシュを差し出してくれる遥輝。


そして、温かい手でずっと頭を撫でてくれている。


「俺がお前の青春、作ってやる」


「…え……?」


唐突に言われた言葉。


それは何よりも力強くて、希望をもらえるものだった。
 

「お前がやりたいこと、叶えてやっから。だから泣くな」


「…どうして…?どうして私のためにそんなことしてくれるの?」


つい一週間前に一度会っただけなのに。


まだ直接話したのだって2回目なのに。


「なんでだろうな。なんとなく放っとけねぇんだよな。死んだ妹に似てるからかな」 


ふっと笑ったその表情は、どこか寂しげだった。


「茜さん…だっけ?私、そんなに似てるの?」
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