ひと夏のキセキ
「生きてるよ。それは間違いない」


…ならよかった…。


でも…。


アイツの居場所が分かんなかったら、どうやって会いに行けばいーんだよ。


俺は絶対に絢を諦めない。


絶対に一緒に生きて、一緒に幸せになる。


あいつがいない幸せなんか幸せじゃない。


「絢は今どこにいるんですか。あたしたち、どうしても絢に会いたいんです」


「教えろよ」


絢に頼まれたとかどうでもいい。


あいつを一人で死なせるわけにはいかない。


絶対に、最後まで俺がそばにいる。


「教えたら絢ちゃんに怒られるから」


「は?なら今俺がぶん殴ってやろうか?」


絢に怒られるから何も言わないって、頭おかしいんじゃねーの。


俺の知らないところで絢が一人で苦しんで一人で死ぬことなんて考えたくもない。


絶対にそうはさせない。


「俺は…絢を心の底から愛してる。今まで何度も傷つけたけど、今度こそもう間違えない。そう決めたんだよ。つべこべ言わず教えろ」


居心地悪そうに視線を反らす親父。


なんでわかんねーかな…。


「お前だって、母さんや茜を亡くした立場だろ。しかも、亡くなったことを事後に聞かされたんじゃねーのかよ。なんで俺の気持ちがわかんねぇんだよ!」


葵に脇腹を小突かれて、周囲からの視線に気づく。


「…とにかく教えろ」


居場所を聞き出すまで絶対に帰らない。
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