ひと夏のキセキ

別れ


初めて来る空港はまるで迷路のよう。


迷わないようにお父さんお母さんについていくのがやっとだ。


でも、怖くはなかった。


遥輝がずっと手を握っていてくれたから。


「ね…遥輝」


「ん?」


「私、絶対元気になって帰ってくるからね」


もう、お別れだ。


搭乗口に向かわなくちゃいけない。


「ん。待ってる」


「だから、浮気しちゃダメだよ」


寂しい、悲しい気持ちを隠して笑顔を作る。


「するわけねーじゃん。俺はお前しか見てない。絢以外の女は愛せない」


…っ!


近くにお父さんもお母さんもいるのに、はずかしいよ…。


「絢こそ、海外のイケメンに引っかかるなよ?」


「大丈夫だよ。指輪してるもん」


「ほんとかよ。お前は絶対モテるんだから、心配なんだよ」


「ヤキモチ妬いてるの?」


「うるせーよ」


可愛い。


そんな遥輝が大好き。
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