ひと夏のキセキ
「会いたかった。おかえり、絢」


ギューッと抱きしめられると、遥輝の甘い香りが広がる。


「ただいま。2年も待っててくれてありがとう。ごめんね…?」


2年前の夏の終わり、アメリカに渡ってからの道のりは長かった。


長時間フライトや環境の変化によるストレスで、向こうに着いてから体調が悪化した。


それでも、生きることを諦めなかったのは、遥輝が待っていてくれたから。


日本に遥輝を残して死ねないと強く思っていた。


だからツラい治療も乗り越えられたんだ。


「もう元気になった?」


「うん!元気だよ。だからいっぱいお出掛けしようねっ」


やりたいことリストはまだまだ残っている。
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