ひと夏のキセキ
拗ねる葵を軽くあしらいながら、一直線に私の隣へ来てくれる。


「検査お疲れ。これ、昨日言ってたやつ」


「ありがとう!後で読むね!」


全部で10冊くらいはあるだろう漫画を紙袋に入れて渡してくれた。


アクションもので、男の子が好きそうなテイストだ。


「なに、昨日も会ってたの?」 


葵が興味津々といった表情で聞いてくる。


「…お前、しばらく外出ててくんね?」


「あー酷い酷い。どうせあたしは邪魔者ですよーっだ」


葵が不貞腐れて遥輝を睨む。


「ごめんね、葵。そんなことないよ。3人で話そうよ」


せっかく同じ病室なのに、締め出すのは可哀想だ。


私は3人で仲良く話せるだけで嬉しい。


「いや、あたし散歩してくるからふたりで話しなよ。こいつ、見かけによらず独占欲強いからさ?」


葵はウインクして軽快に部屋を出ていってしまった。
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