ひと夏のキセキ
そう微笑むと、遥輝もふわっと笑顔になって頭を撫でてくれた。


この仕草が大好きだ。


クールな表情が崩れて、マシュマロのような柔らかい笑顔になる瞬間。


そして、優しく温かい手で頭、髪を撫でてくれる仕草。


それだけで胸の鼓動が加速する。


この手に触れたい。


でも触れられない。


「昨日した約束覚えてる?」


「約束?」


「お前がやりたいことを全部叶えてやるって約束」


「それ、約束してくれるの?」


私が泣いてしまったから、その場を収めるために言ってくれただけなのかと思っていた。


まさか本気で言ってくれていたなんて。


「約束する」


「ホントに…?」


「あぁ」


力強く言い切る遥輝は、まるで救世主だ。


真っ白い箱に囚われた私を自由にしてくれる救世主。


そんな遥輝は、私の目にとても眩しく輝かしく映った。
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