ひと夏のキセキ
「…私も外の世界に行きたいな……」


学校に通った記憶も数少ない。


一学期間ずっと通えたことなんて一度もない。


でも、それが私の“普通”。


皆とは違う“普通”。


「普通なんて言葉、なくなっちゃえばいいのに…」


皆と違うことがずっとコンプレックスだ。


私は普通じゃないんだ。


だからすぐに死んじゃうんだって。


「あたしも“普通”って言葉嫌いだな」


入口から聞こえてきた聞き慣れない声に振り向くと、ベリーショートでキリッとした顔立ちの女性が立っていた。


「えーっと…」


知り合い…だっけ…。


そんなわけないか。


私に友達なんていないんだから。


「あぁ、急に喋りかけてごめん。あたしは宮内葵(みやうちあおい)。葵って呼んで。今日からよろしくな」


宮内葵さん…葵は、そう言って私の隣のベッドに腰を下ろした。
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