ひと夏のキセキ
中学生レベルで止まってる私が高校2年生の内容を理解できるとは思えない。


私は本気で落ち込んでいるのに、遥輝は楽しそうに口角を上げている。


「なんで笑うの…」


「微笑ましいなぁと思って。5歳児見てるみたい」


「バカにしないでよ…」


「してねぇよ。感情が全部顔に出るのが素直で可愛いって思っただけ」


…っ!


平然とそんなこと言わないでよ…。


恥ずかしい…。


急に目を見れなくなっちゃった。


「勉強教えてやろーか?」


遥輝はお構いなしに続ける。


“可愛い”ってどういう意味なんだろう。


誰にでもよく言うのかな…。


「おーい、聞いてる?」


「えっ、あっ、ごめん、何?」


「だから、勉強教えてやろうか?って」


遥輝と勉強会…。


すごく楽しそう…。


それに、勉強会なら外出許可が出なくてもできる。


「教えてほしい!」


わくわく期待を膨らませながら答えると、遥輝はまた柔らかい笑顔を向けてくれた。
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