ひと夏のキセキ
あっけらかんとしていて明るい彼女。


薄暗い病室を物珍しそうにキョロキョロ眺めている。


栗色のサラサラの髪の毛、切れ長の目、少し尻が上がり気味の細い眉、スラリとした手足。


美人とも言えるし、イケメンとも言えるボーイッシュな雰囲気だ。


「カーテンなんで閉めてんの?開けていい?」


「うーん…まぁ…」


直接浴びたり見たりしなければ大丈夫なんだけど、私はどうしても太陽が嫌いだ。


いつも決まった時間にすかした顔して昇ってきて、決まった時間に消えていく。


まるで地球の支配者。
 

誰が何を言おうと動じないし、ずっとそこにあり続ける強い存在。


私と正反対だ。


「やっぱりさ、日光って偉大だよな」


「…そうかな」


「だってさ、あたしらがどんなに悩んでたって、太陽はいつでもあたしたちを照らし続けてくれるじゃん。どっかの国のお偉いさんだろうと、あたしたちみたいなちっぽけな存在だろうと平等にさ」


……底抜けにポジティブな人。


まるで太陽。


それが葵の第一印象だった。


隣が賑やかになったなぁ…


そんなふうにしか考えていなかったんだ。


彼と出会うまでは。
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