ひと夏のキセキ
何が好きとか、嫌いとか。


楽しかったこととか、ムカついたこととか。


何でもいいから聞きたいな。


「…絢はホントに遥輝が好きなんだな」


「……私そんなに分かりやすい?」


「分かりやすいもなにも、顔にデカデカと書いてあるよ」


「えっ、うそ…」


遥輝に伝わっちゃってたらどうしよう…。


私みたいな病人に好かれても迷惑だよね…。


でも、たくさん可愛い可愛いって言ってくれたってことは迷惑だと思ってないのかな…?


「そういうところが遥輝が絢を気に入った理由なんだろうな。だから絢はずっとそのままピュアでいたらいいんだよ」


私の心を読んだようにアドバイスをくれた。


私は私らしく。


残り少ない人生、自分らしく生きたほうがいいよね。


「ありがとう、葵」


葵と話してたら元気が出た。


あとで遥輝に連絡しよう。




そう思い、その日の夜連絡してみたけど遥輝からの返信はなかった。


【今日は嫌な思いさせちゃってごめんね。もし遥輝が嫌じゃなかったら、また病院で会いたいな…。だめかな…?】


一夜明けても既読がつかないメッセージを見つめる。 


いつもならすぐに返信が来るのにな…。


「はぁ…」


やっぱり嫌われちゃったのかな…。


私が神田先生の患者だから…。


嫌いになったのなら、はっきりそう言ってほしい。


そうしたら私はもう諦めるから。


無視されるのはハッキリ言われるよりも苦しいよ…。


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