ひと夏のキセキ

✡✡

結局、遥輝からの返信は来ないまま1週間が過ぎた。


そして葵は退院し、以前の寂しい日常が帰ってきた。


もぬけの殻となった隣のベッドを眺めると、寂しさで胸が苦しくなる。


葵がいる時間はずっと楽しかったなぁ…。


笑いが耐えなくて、いつも明るい気持ちにさせてくれていた。


遥輝と出会えたのも葵のおかげ。


その遥輝からは連絡が返ってこないけど…。


「絢ちゃん。この前言ってた学校に行きたいって話だけど…」


堂島さんが病室に入ってきた。


最近体調も優れないし、きっとダメなんだろうな。


葵はいなくなり、遥輝との繋がりも途切れてしまった。


寂しい。


寂しくてしかたない。


一度楽しさを知ってしまったからこそ、寂しさが倍になるんだ。
< 71 / 353 >

この作品をシェア

pagetop