ひと夏のキセキ


教室へ着くと、葵がなぜこんなに注目を浴びてるのかよく分かった。


「えぇっ!葵様が教室に!!」

「相変わらずかっこいー!」

「隣の子誰?」

「めっちゃ可愛い!」


女の子たちを中心にクラスにざわめきが広がる。


でもそれは嫌なざわめきじゃなくて、葵に憧れているようなざわめきだ。


それに“葵様”ってなに…?


葵はこの学校でどんな位置づけなの?


「皆おはよ。この子は、あたしの親友の桜木絢。ほら、ずっと入院してる子がいただろ?その子。仲良くしてやってよ」


頭の中が疑問でいっぱいのまま、葵が私を紹介してくれた。


それも、“親友”と。


「絢ちゃんかぁ!私1年生のときも同じクラスだった!よろしくね!」


「私も絢ちゃんと仲良くなりたい!よろしくー!」


そのおかげか、何人もの子が声をかけてくれ、あたふたしつつもなんとかクラスに溶け込むことができた。
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