ひと夏のキセキ
“話を振らないで”
一応目で訴えかけたけど、葵には伝わらなかった。
「この子、今日知り合った桜木絢。んで、コイツらがあたしの友だち。茶髪チビが太田海(おおたかい)。赤髪バカが松井陸(まついりく)。黒髪ハーフアップが佐々木真生(ささきまお)。見た目は怖いけど、全員いい奴だよ」
3人からはヤンキーのような刺々しいオーラはなく、優しそうな穏やかな雰囲気が漂っている。
葵の友だちなら、きっと仲良くなれる。
根拠はないけどそんな気がした。
「絢ちゃんよろしくね!海って呼んでいーよ!」
「俺のことも陸って呼んで!てかめっちゃタイプ!仲良くしよーぜ!」
「ナンパすんなバーカ。俺は真生でいーよ。絢って呼んでい?」
「真生だけずりぃ。俺も絢って呼ぼー。いい?」
「あ…えっと……う、うん…」
関わったことのないタイプの人たちに一斉に詰め寄られ、緊張して上手く話せない。
つまらない子って思われたらどうしよう…。